第81回 難民キャンプが揺れている
2016年11月11日
栗本からお送りいたします。
スタディツアーから帰って、まだ2ヶ月しか経っていないのに早くタイに行きたいと思う今日この頃。
『難民キャンプが揺れている』
タイ・ミャンマー国境沿いのタイ側に9ヶ所の難民キャンプがあり、現在も10万人以上のミャンマーの方たちが暮らしている。
2014年からFAIRROADのスタディツアーで、メラ難民キャンプ(最大の難民キャンプ38,000人)を訪問し、図書館で子どもたちと交流をしている。
2014年-折り紙(ぴょんぴょんがえる・ぱたぱたつる)
2015年-糸でんわ(音は振動で伝わる体験)
2016年-電気くらげ(静電気を体験)
人懐っこい子どもたちは、全力で取り組み楽しんでくれるし、時には思いもよらぬ発想でびっくりさせてくれる。
図書館に子どもたちの笑顔が溢れる…
また、家庭訪問をさせていただきお母さんにお話を聞かせてもらう。
紛争や人権侵害など極限の状況で国境を越えキャンプにたどり着いている。
1人のお母さんの夫は、ミャンマーで武器を運ぶ仕事をしていたが、過労で亡くなった。
心臓に持病があるお母さんは、第三国定住でアメリカに住んでいる長男がいるが迷惑をかけるので行けないと言っていた。
いずれのお母さんもミャンマーへの帰還は考えられないと言っている。
孫世代には、ちゃんと教育を受けてもらいたいと願っている…
タイは2014年5月の軍事クーデターで軍事政権が誕生した。
そして、7月には難民キャンプにおいてヘッドカウント(所在確認)を行うため、
移動制限を強化した。と同じ時期にタイ・ミャンマーで帰還合意をしている。
帰還のステップとして
①難民個人の自発的な帰還
②国際機関等の援助を受けた帰還
③強制される帰還となっている。
現在、自発的な帰還は終了し、②ステップに移り国際機関が各難民キャンプで帰還のリストを作成し帰還に向けた準備を開始している。
11月から来年4月(タイの乾季)に大規模な帰還の動きがあるかもしれない…
今、難民キャンプは大変厳しい環境にある。
ミャンマーの民主化で各国の開発援助や経済支援が中央に集中し、その反面国境沿いの支援が激減している。
○食料やその他物資の減少○医療や教育分野など基本的社会サービスの縮減
○国際NGOの資金不足による撤退
○難民キャンプの指導者の高齢化による引退や第三国定住。
このような状況下で、自殺者の増加。若者のアルコールや麻薬による傷害事件が増加している。
(SVA:菊池礼乃さんの情報を引用)
この3年間、難民キャンプは揺れている…
今年6月、ミャンマーのアウンサンスーチー国家顧問兼外相とタイのプラユット暫定首相が会談を行っている。
タイ国内にいる300万人の移民労働者の待遇改善や経済協力についての話しと、
国境の難民キャンプで暮らす人たちの安全で尊厳を持った帰還を要請している。
しかし、ミャンマー側の受け入れ準備の状況が伝わってこない。
「児童の権利に関する条約」にある保障されるべき基本的な社会サービス「保健・医療・衛生・住宅・水・栄養・教育・文化・情報」などが
担保されなければならない。
タイもミャンマーも締約国である。
子どもたちが、今の図書館のような安心できる大人がいて、文化や芸術に触れ、笑顔が溢れる場所が確保されているのか。
子どもたちの、潜在能力を十分に発揮できる環境があるのか…
個々の子どもの顔が浮かぶ。